とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

2023-01-01から1年間の記事一覧

あと少しで今年も終わるけれど

カレンダーを見て驚愕する。 気がついたらもう30日になっていた。 毎年のことだが、12月はカレンダーを見るたびに「え? もう○日?」と言ってしまう。別に焦っているわけではない。だって、12月で世界が終わるわけではないのだから、そもそも“やり残したこと…

信じた道を進む強さ

◆観た舞台 舞台『ジャンヌ・ダルク』 演出/白井晃 脚本/中島かずき(劇団☆新感線) 出演/清原果耶、小関裕太ほか 【東京公演】2023年11月28日~12月17日 東京建物 Brillia HALL 【大阪公演】2023年12月23日~12月26日 オリックス劇場 演劇のおもしろさ、…

ピアノとダンスと想像と

◆観た舞台 『ある都市の死』 上演台本・演出/瀬戸山美咲 出演/持田将史(s**t kingz)、小栗基裕(s**t kingz)、小曽根真 【東京公演】2023年12月6日~10日 草月ホール 【大阪公演】2023年12月12日、13日 サンケイホールブリーゼ 戦争を生き抜いたポーラ…

ひとりじゃないと思える存在

◆観た映画 『星くずの片隅で』 監督/ラム・サム 出演/ルイス・チョン、アンジェラ・ユンほか 2022年/香港/115分 フワッと心に温かい風が吹いてくる気がした。 コロナ渦の香港の街で、懸命に生きる人々の姿を描いた作品、といえば一言で終わるが、一言で…

心の奥底に沈んでいるものは?

◆観た映画 『アンダーカレント』 監督/今泉力哉 出演/真木よう子、井浦新ほか 2023年/143分 ものすごく感情が揺さぶられる映画だった。 感情が露わになる場面はほとんどなく、セリフも多いわけではないが、登場人物たちの気持ちがじわじわと伝わってきた…

「寂しい」と似て非なる感情

不意に、寂しいような気がする時がある。 それは、一人でいる時だけではない。周りにたくさん人がいる時もだ。でも、周りにたくさん人がいるのに寂しいってどういうことだ? とりあえず、辞書で意味を調べてみた。 さびしい【寂しい】 ①人やものが少なくて、…

陶芸体験記

はじめて陶芸体験をした。 陶芸で使う土の塊を実際に持ってみると、思っていたよりもずっしり重かった。土の感触はとても滑らかで冷たく、触れていて心地よかった。形の異なる湯飲みを二つ作ろうと思い、球状にまとまっていた粘土を糸のような用具で半分にし…

本を読まなくなると…

以前よりも本を読まなくなった。 本を読むとあれこれ考えを巡らせてしまう。あの表現がめちゃくちゃ好きだとか、あれってどういう意味なんだろう、とか。その時間が好きだった。しかし、それによって影響を受けるものがある。仕事だ。何かにどっぷり浸かると…

雲を見下ろして

機内にて。 離陸から数十秒後には雲を見下ろしていた。 普段地上で生活をしていて、雲を見上げるとは言うが、雲を見下ろすという言葉を口にすることはまずない。久しぶりに雲を見下ろすと言った。天気がよかったので、白塊の群れの間から地上の景色が見える…

生活駄文・八

9月某日 コンビニで久しぶりにカルピスウォーターを買おうとした。だが、冷蔵室の扉を開けてペットボトルを手に取ろうとした瞬間、「ん?」と躊躇いが生じた。なぜ躊躇うのだろう。久しぶりのカルピスウォーター。それはとても暑い日だった。喉が渇いていた…

あなたをなんと呼んだらいいか?

ニュースを見ていて気になったことがあった。 取材をしている記者が、インタビュー相手のことを「お父さん」と呼んでいたことだ。なぜ他人なのに「お父さん」と呼ぶのだろうか。二人称と言えば「あなた」だが、日常会話であまり使わない気がする。街頭インタ…

美術展巡り9月

◆9/9(土)ベルナール・ビュフェ美術館(静岡県) 【“ビュフェ・スタイル”とは何か?】 ベルナール・ビュフェの絵に出会ったのは去年だった。山形美術館で開催されていた「服部コレクション 山形が誇るフランスと日本の美術」で、ある一枚の絵に強烈に惹かれ…

生活駄文・七

8月某日 シシトウガラシは、トウガラシという名前がついているが辛みがほとんどない品種だ。味はピーマンに似ている。ほんのり苦みがあり美味しいのだが、稀に激辛のものが混ざっていることがある。そう、その辛いやつを一日に2本も食べてしまったのだ。見…

美術展巡り8月

◆8/19(土)国立新美術館(東京都) 【蔡國強 宇宙遊―〈原初火球〉から始まる】 火薬を爆発させて描いていることに驚くとともに、その絵からものすごいエネルギーが伝わってきた。静かにそこにある絵は、激しい爆発(=「動」)によって生まれた。この「静」…

静寂と歓声

ハンガリー・ブダペストで世界陸上が開催されている。普段スポーツは全く見ないが、陸上だけはつい見入ってしまう。私自身もともと走ることが好きで、学生時代は陸上競技をやっていた。あの選手のここがすごい、など詳しいわけではないが、世界トップクラス…

何を見るか、何が見えるか

写真が好きだ。何だかざっくりした表現なのでもっと具体的に言うと、シャッターを切りたくなるような構図や色に出会った瞬間のワクワク感が好きだ。とりわけフィルムカメラは、現像するまでどんな写真が撮れているかわからないので、現像してもらった写真を…

跡形もなく消えたとしても

私が借りている駐車場の隣の家には、立派な桜の木があった。昨日までは確かにそこにあった。でも今は跡形もなく消えている。本当に桜の木があったのかと疑いたくなるくらいきれいに消えていたから驚いた。なんだかとても寂しかった。その家はもともと空き家…

生活駄文・六

6月某日 その日は出張で東京駅に降り立った。人、人、人。とにかく人が多い。自分の乗るべき電車に向かう人々が縦、横、斜めと様々な方向に行き交う。その流れの中で立ち止まることはできない。水の流れをせき止めてしまうことになるから。いつ来てもせわし…

冷めない香り

大学時代、夫婦で営んでいる小さなお弁当屋さんに週に一度か二度通っていた。お弁当屋さんからはいつも揚げ物の香りがしていた。その香りを嗅ぐと、不思議と心がほぐれていった。 一人暮らしを始めた当初は、なるべく自炊をしようと意気込んでいた。だが元々…

霧の中へ

ある日の夜11時半頃、出張から帰ってきて駅を出ると、一面霧に覆われていた。空気はひんやりしていてゾクッとした。ただ寒いだけではない。なんだが心がざわつくような気配がした。駅から自宅まではタクシーを使った。車窓から眺める景色はいつもの見慣れた…

マンゴーかき氷×3

母と祖母と台湾料理の店に行った。 この時期限定のマンゴーかき氷を食べることが一番の目的だった。この時期を逃してしまうと次は1年後になってしまう。普段は食に対してこだわりがない私だが、あのおいしさを分かち合いたいがために店を予約した。天気は快…

煙の誘惑

スーパーの駐車場にて。 車を降りた瞬間、なんとも香ばしい匂いが鼻を襲撃し、思わず深呼吸。「なんじゃ?この香りは?どこから香ってくるのじゃ?」なんて昨日見た時代劇に影響されまくったつぶやき(もちろん声には出さずに心の中で)と共に周囲を見渡した…

生活駄文・五

5月某日 ある日の夕暮れ。つい先ほどまで雨が降っていたことを証明するような、湿り気のある香りが立ちこめていた。雨は嫌いだ。雨の日は体が重くて気が滅入る。その日もどんよりした気分で職場から駐車場まで歩いていた。すると、視界の隅に“色”を捉えた。…

「わたし」の破片を持つ「あなた」

大学時代、友達が面白いことを言っていたのを思い出した。 「たとえ別れてもさ、ずっと私のことを忘れないでほしい。それで、別れたあの人がふとした瞬間に自分のことを思い出してしまうようなら、私は勝ったと思うね。」 飲み会で恋愛の話になったとき、友…

生の隣には

◆読んだ本 『小僧の神様 城の崎にて』/志賀直哉/新潮社/1968年 蜂の静かな死、死から全力で逃げ回る鼠、思いがけず殺してしまったイモリ。養生先での出来事が淡々と記された文から伝わってくるのは、筆者の心の静けさだ。穏やかとも冷淡とも違う、静謐さ…

それは単なる偶然

自分にとってよくないことが起こった時ほど、単なる偶然に意味を見いだす傾向が強いと感じた(自分自身が)。そして偶然に意味を見いだすことで自らをさらに悪い方へ誘導しているような気もする。 例えば、夕食の準備をしている最中に、包丁が指にあたって切…

ある小さな崩壊

最近まで、家の中でチューリップを飾っていた。 日中は花びらが大きく開いていた。横から見ると可愛らしい湯飲みのような形に見えるのだが、上から覗くとおしべとめしべがはっきりと確認できるものだから、なんだか見てはいけないものを見てしまったような気…

生活駄文・四

4月某日 銭湯に行った時のこと。 休日ということもあり、いつもよりも人が多かった。サウナは苦手だが温泉なら2時間くらいは余裕だ(途中でシャンプーをする時間も含めて)。何よりも液体の中にいるのが心地いい。ぼんやりすることを歓迎してもらえる空間で…

虚像を生きる

2023年4月某日 茨木のり子さんの詩が好きだ。歯切れのよい言葉の奥にある強い思いに共鳴する。特に好きなのが、〈さくら〉という詩だ。その中にこんな言葉がある。 さくらふぶきの下を ふららと歩けば 一瞬 名僧のごとくにわかるのです 死こそ常態 生はいと…

私と桜とマルとバツ

2022年4月某日 桜の季節になると思い出すことがある。 小学時代、オリジナルカレンダーを制作するという内容の授業があった。何の科目だったかは覚えていない。国語だった気もするし、そうでない気もする。とにかく、12枚の紙が配布された。その紙は上下に分…