とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

生活駄文・十

車窓に映る私は、キンパを頬張りモグモグと口を動かしていた。

新幹線に乗った時の話だ。

 

本を読むのに疲れ、寝ることにも飽きると、大抵は窓の外をボーッと眺めている。日が沈み、外が暗くなり始めると車窓は鏡になる。外を見ていると、ふとした瞬間に自分と目が合ってしまうのがなんだか気まずい。まあでもいつものことなので、それほど気にはしていない。

 

問題は食事の時だ。夜8時頃にお腹が空いてきたので、駅で買ったキンパを食べようとテーブルをセットした。幸いなことに、隣の席には誰も座っていなかったのでゆっくり食事ができる。蓋を開けるとごま油の香りがフワッと立ちのぼり、食欲を刺激した。「いだきます!」と、食べやすくカットされたキンパを一口で頬張った。ふいに窓の方を見ると、モグモグしている自分の姿をはっきりと捉えた。その時のあの何とも言えない気分はどう言葉にしたらいいか分からない。食事をしている時というのはあんなにも隙だらけで無防備な姿なのか。知らなかった。それもそうか。普段鏡の前で食事をするなんてことはないから、自分が食べている姿なんて見る機会がない。恥ずかしいような気もするが、はじめて見る自分の食事シーンをおもしろがっている自分もいる。なんとも不思議な気分のままキンパを完食した。