とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

2024-01-01から1年間の記事一覧

「私、ビール苦手なので!」って言えなくなった話

子供の頃、大人は皆ビールが好きだと思っていた。 というか、ビールを美味しく飲める人が大人だと思っていた。 ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを胃に流し込む映像はビールCMの王道だった。そして、そんな王道CMでは、飲み口から唇を離した後の第一声は必ず「…

時よ止まるな

2024年4月某日 川沿いの桜並木道を走る。 毎年の密かな楽しみだ。先週までまだ蕾だった花はすっかり満開になった。西に傾き始めた陽光が水面に反射していつにも増して眩しかった。桜並木を通るといつも脳内で再生されるのは、クロード・ドビュッシーの「アラ…

春は短し目覚めよ私

春はどうも眠い。 体の周期的に眠気がガツンと来る時期にちょうど重なった今は更に眠い。 平日はというと、夕飯を食べてからまず寝る。数十分後に起きてお風呂に入り、その後に本を読もうとするもウトウト。結局何も手につかず寝てしまう。何の予定もない日…

春になると

春になると花を植えたくなる― ホームセンターのガーデニングコーナーは花を求める人で溢れていた。 なんだか心が温かくなった。 「あら綺麗ね!」 「この花可愛い!」 「どこに植えようかな」 まだ背丈の小さな花や蕾の状態の花を見つめる眼差しは、みな優し…

生活駄文・十

車窓に映る私は、キンパを頬張りモグモグと口を動かしていた。 新幹線に乗った時の話だ。 本を読むのに疲れ、寝ることにも飽きると、大抵は窓の外をボーッと眺めている。日が沈み、外が暗くなり始めると車窓は鏡になる。外を見ていると、ふとした瞬間に自分…

フィルムカメラと写真に関する備忘録【後編】

フィルムカメラで写真を撮ることの魅力は何か。 “光”と向き合えることかもしれない。 例えば、少し暗めの写真が好きなので、露出計で示されたF値よりも絞ってみたとする。シャッターを切る瞬間、ほんの少し太陽に雲がかかり、光が弱まったことに気がつかずそ…

フィルムカメラと写真に関する備忘録【前編】

中古のフィルムカメラを買った。 前に使っていたものが壊れてしまったため、いいものがないか探していたところ、直感的に「これだ!」というものに出会った。「Konica ⅡB」というカメラだ。調べてみると1955年販売開始のようだった。ということは今から約70…

生活駄文・九

コーヒーショップにて。 また注文してしまった。何をって、あまり好きではないメニューを。商品を受け取って、一口飲んでびっくりした。 「あれ? これ前にも頼んだことあるぞ。しかもあんまり好きな味じゃない…」 やっちまった。なぜだ。もう二度目は注文し…

幻の通学路

先日、ふと思い立って、散歩がてら小学校の時の通学路を歩いた。卒業以来だったからかなり久しぶりだ。 家から小学校までは、当時の歩くスピードで20分以上かかる距離だ。よく毎日歩いたもんだと今更ながら感心した。そのおかげで、と言っていいのかは分から…

悲劇の小指

また足の小指をぶつけた。何であんなに痛いのだろうか。 朝起きてトイレに行こうとベッドから降り、歩きだそうとした瞬間近くにあったイスに激突。「いっ!」とスタッカートがついた音を発した。本当に痛いときは「痛い!」なんて言えない。よって、“声”では…

冬の太陽

久しぶりに陽光を浴びた。 ここ何日間かずっと曇りか雨か雪だったから気分が沈んでいたが、やっと青空を見ることができた。気分がいい。こういう日は外に出たくなる。夏はあんなに日焼けを気にして日光を避けていたのに、待ってましたと言わんばかりに浴びに…

湯けむりと椿

露天の湯に浸かりながら、椿を見た。少しぼやけた赤だった。冬の朝の冷えた空気によく似合う、張りのある赤が見たかった。しかし目の前が霞んでいた。湯けむりだ。立ち昇る湯けむりが椿の姿を絶え間なく隠すのだった。けむりを払おうと腕を振ったが、一向に…

雪が降らなくなった冬を生きるあなたへ

拝啓 雪が降らなくなってどれくらいたったでしょうか。 雪の冷たさや白さは覚えていますか。 ちなみにこの手紙を書いている今は、10年に一度といわれる寒波が襲来していて、骨まで染みる寒さにかろうじて耐えてます。嘘です。温かい室内でコーヒーを飲みなが…