とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

フィルムカメラと写真に関する備忘録【前編】

中古のフィルムカメラを買った。

前に使っていたものが壊れてしまったため、いいものがないか探していたところ、直感的に「これだ!」というものに出会った。「Konica ⅡB」というカメラだ。調べてみると1955年販売開始のようだった。ということは今から約70年前。販売開始されたのがその年なので、私が買ったカメラが製造されたのはもっと後かもしれない。それにしても綺麗な状態だった。多少のキズはあるものの、新品かと思うくらい綺麗だった。前に使っていた人がきちんと手入れをして、丁寧に扱っていたことがよく伝わってきた。だから、カメラを前に「次は私が大切に使います」と、顔も名前も分からない前の持ち主に敬意を表して宣言した。

 

いざ使い始めると、一枚撮るまでに何工程もあることに気がつく。露出計を用いて適正露出を測り、絞りとシャッタースピードを自分で設定する。ファインダーをのぞきピントを合わせる。そしてフィルムを巻き上げ、シャッターをチャージし、シャッターボタンを押す。これでやっと一枚撮れる。スピード感は皆無だ。決定的瞬間を逃すことは明らかだろう。そもそもピントがちゃんと合っているかも分からない。

 

でもそれでいい。むしろそれがいい。

フィルムカメラで写真を撮ることが楽しいのだから。

 

最近のスマホカメラの性能はとんでもなくいい。自分が思った通りの写真を撮ることはそう難しくはない。多少失敗しても後から修正できる。なんなら、アプリを用いてフィルム写真の質感を忠実に再現することだって可能だ。そんな便利なものがあるのに、私はほとんどスマホで写真を撮らない。

え、なんで?

写真が好きならフィルムカメラで撮ろうが、スマホで撮ろうが関係ないように思う。“何で”撮るかよりも“何を”撮るかの方が重要だという考えを持っているならなおさらスマホで写真を撮らないのは不自然だ。あれか、写真はカメラで撮るべきだという意地でも張っているのか。いや、待てよ、私は数行前に何と書いたっけ。「フィルムカメラで写真を撮ることが楽しい」と書いた。

 

これまで写真が好きだと何度も言ってきたが、よく考えたら、なんともアバウトな表現だった。今ようやく分かった。私が「写真が好き」という時は、「フィルムカメラで写真を撮ることが好き」を意味しているのだ。

じゃあその魅力って何?

 

つづく