無名日々記

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

上野公園迷子記録

先週、上野の東京都美術館で開催中の「エゴン・シーレ展」を見にいった。チケットはオンラインで既に購入していたため、予約の時間から1時間以内であればいつでも入場できる。時間ではなく、時間枠の予約ってすごくありがたいのだが、時間内であればいつでもいいといわれるとなんとなく気が緩んでしまう。といっても、いつもは何の問題もなく間に合っている。しかし今回は違った。

美術館が見つからない!

私はスマホを見ながら歩くのが嫌なので、いつも目的地までの行き方は事前に調べて頭に入れておく。どの線の何行きに乗ってどこで乗り換えるか…など頭の中でシュミレーションするのは嫌いじゃない。むしろ好きかもしれない。今回も例外なく、美術館までの道のりを頭に入れていたはずだった。東京都美術館もはじめて行く場所であったが、そもそも上野公園に入るのもはじめてだという状況を甘く見ていたのだ。

 

美術館のWebサイトによれば東京メトロ上野駅から来る人は、すぐ公園内に入らずにJR上野駅公園改札の方まで歩き、そこから公園内へ入るというルートが示されていた。それが最も分かりやすいルートなのだろう。だが私は何を思ったのか、そのルートを完全無視。メトロの上野駅の近くに階段が見えたため、「ここから上野公園入れるじゃん!」という、階段があったらとりあえず上ってみるスタイルを採用し公園内に入ってしまった。階段を上ると西郷隆盛像や彰義隊のお墓があり、教科書やテレビでしか見たことがなく、“歴史”として捉えていた人物が本当にあの時代を生きていたんだ、という実感がふつふつと湧いてきてグッときた。…違う、今回の目的は「エゴン・シーレ展」を見ること。美術館はどこだ? 公園の奥の方まで歩みを進めた。すると、一つ二つと花が咲き始めている桜の木々が見えてきた。あとから知ったが、これが「さくら通り」だった。この時点で、予約時間から30分経過していた。まぁこのくらいなら、と思っていた数分後に、このさくら通りを走ることになる―

 

通りを歩き続けてもなかなか美術館らしき建物が見えてこないため、一度園内の案内図を見ることにした。地図を確認すると、美術館をすでに通り越していることが判明した(残念なことに、この時点では地図の見方を間違っています)。ということで来た道を急ぎ足で戻った。だが、案内図で見た十字路が見つからない。あれ? おかしいぞ。やっと焦りはじめた。この時点で残り20分。間に合わなければ入場できないかもしれない…。戻った先の案内図でもう一度よく確認すると、戻る必要はなかったとやっと気づいた。さっきの場所でよかったんじゃん…と言いながらさくら通りを走った。多くの見物客が、まだ咲き始めて間もない桜を愛でていた。桜とともに写真を撮る人もたくさんいた。その横を爆走する私。あぁこの桜が満開になったらさぞ美しいのだろう、なんて物思いにふけながら歩きたかった。それにしても広い。上野公園は広かった。土地勘もないのに調子に乗って推奨ルートを無視した自分が悪い。上野動物園が見えてきて、その横の道を進むとレンガ色の建物が見えてきた。あった! やっと着いた! 気温は高くないはずなのにせわしく動き回ったせいで、この時期にしては珍しく汗をかいた。

 

ずっと見たかった展覧会。心を落ち着けて、感覚を研ぎ澄ませて鑑賞しようと思っていたが、まさかその前段階で美術館を探して彷徨うことになるとは。それでもなんとか無事に入場できたのでよかった。上野公園、次に訪れるときは「そういえばはじめて来たときはこの道を走ったな~」なんて思い出しながらゆっくり歩きたい。