とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

陶芸体験記

はじめて陶芸体験をした。

陶芸で使う土の塊を実際に持ってみると、思っていたよりもずっしり重かった。土の感触はとても滑らかで冷たく、触れていて心地よかった。形の異なる湯飲みを二つ作ろうと思い、球状にまとまっていた粘土を糸のような用具で半分にした。

 

まず、適当な量の粘土をちぎって回転台の上に載せる。厚さがだいたい1センチくらいになるように手のひらを使って伸ばす。これが土台となるのだ。次に、同じようにちぎった粘土を棒状に伸ばし輪をつくり、先ほどの土台の上に載せる。そして、土台との境目をなくすように馴染ませていく。ここでしっかり馴染ませないと、焼き上がったときにひびが入ってしまうのだそう。輪を作り重ねて馴染ませる、この作業を3~4回繰り返すと形ができてくる。膨らみがあった方がいいか、スリムな形にするか、模様を付けるかなどは、好きなようにしていいとのこと。はじめての体験で、記念すべき一個目なので、シンプルにしようと思い、模様は付けないことにした。表面をヘラで整えたり、厚さを均等にするために少しずつ伸ばしたりと微調整を繰り返し、やっと一つ完成した。

 

作りたい形を思い浮かべながら手を動かすのは、簡単そうに見えて意外と難しかった。そして、なかなか想像通りの形は作れなかった。何年も何十年も作り続けている人なら、頭で思い描いた形どおりに作り上げることができるのかもしれない。ほんの少しの力加減で厚さや形が変わるから、お手本と同じように作っているつもりでも、全く同じ形にはならない。思い通りにならないもどかしさもあったが、どうしたらいい形ができるかを考える楽しさの方が勝った。ものづくりは、実際に自分の手を動かしながら学ぶのが一番だということを実感した。

 

二つの湯飲みを作り終えたあと、心地よい疲労感とともに、次はあれを作りたい、これも作ってみたいという欲が湧いてきた。形だけではなく、釉薬の配合や焼き方など、こだわりだしたらキリがない。今回の体験は形を作るところまで(釉薬は4種類の中から選んだ)だったが、それだけでも、陶芸の奥深さ、ものづくりの大変さとおもしろさを感じることができた。

お気に入りの器が一つあるだけで、日々の暮らしに彩りがもたらされる。あらためて手づくりの器の素晴らしさを感じた。使いやすいように工夫された形は美しく、ぬくもりが伝わってくる。美は日々の生活の中にある、なるほど、これが“民藝”の考え方なのだ。たった数時間の体験で、多くのことを学ばせてもらった。土に触れ、指先に神経を集中させたことで、全身の感覚が研ぎ澄まされたような気がしている。とにかく、ものすごく楽しかった。