とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

【読書記録④】働き方と暮らし方と家の形

◆読んだ本

『脱住宅 「小さな経済圏」を設計する』/山本理顕+仲俊治/平凡社/2018年

 

そういえば、どこの家も同じような作りをしていたっけ。幼い頃、友達の家へ遊びに行った時の記憶がふと蘇ってきた。大体1階にはリビングがあって、2階には寝室や子供部屋がある。その時は、それが当たり前だと思っていたし、これ以外の住宅の形なんて考えたこともなかった。

 

この本の中で、筆者は「一住宅=一家族」に代わる新しい住み方として、“「地域社会圏」システム”というものを提唱していた。これは、経済圏を内包した住宅に住む、というものだと言う。経済圏を内側に持つ(=そこに住む人が、同時にそこで働く人である)ことで、人々が地域経済に参加し、育児や介護、教育や防災なども、もはや個々の家の問題ではなくなる。すると、住民自らが問題解決に向けての意志決定に積極的に参加するようになり、本来的なコミュニティを取り戻すことができるかもしれないと筆者は言う。

 

 リモートワークや副業(複業)など、今、働き方が変化している。働き方が変われば暮らし方も変わり、住宅の形も変化していくだろう。しかし、まだあと何十年かは同じような家が建てられ続けるように感じている。私はこの本を読むまでは、家は、そこに住む個人の空間であり、プライバシーが最大限に尊重される場所であるべきと考えていた。だから、ページをめくるたびに「そんな住宅もありなのか!」「そういう暮らし方もできるのか」と、凝り固まった頭がもみほぐされるような気がした。今までの自分の生活や働き方を見直すきっかけになった。建築を仕事にしている人ではなくとも、働き方や暮らし方を考えるということは、自然と住宅の形を考えることにつながるのだと思った。