とりあえずそこに置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

つながりとぜつえん

◆読んだ本

『絶縁』/著者:アルフィアン・サアット、チョン・セラン、郝景芳、韓麗珠、ラシャムジャ、連明偉、グエン・ゴック・トゥ、村田沙耶香、ウィワット・ルートウィワットウォンサー 訳者:及川茜、藤井光、大久保洋子星泉、野平宗弘、吉川凪、福富渉/小学館/2022年

 

絶縁はどこで起こるのだろうか。社会と自分との間、はたまた家族と自分との間、もしくは自分の内部。つながりがある場所にはそれが絶たれる可能性が常に同居している。自分は何とつながって生きているのだろうか。自分の内部で渦巻く説明できない感情が氾濫した時、何に救いを求めるのだろうか。そんなことを考えながら9つの物語を読んだ。

 

印象に残った言葉がある。

佳恩は、疲れた時には思考を外注したくなることに気づいた。難しいことは他人に任せて何も逆らわずに同意したい。(402頁) 「絶縁」/ チョン・セラン

自分にも当てはまると感じた。ある問題について答えを出そうとあれこれ考えて悩むことは、意外とできていないのではないかとこれまでの自分を振り返った。尊敬しているあの人が言うんだから正しい、専門家の意見なんだから間違いない、というように自分で考えもせずに思考停止していることの方が多かった。この話の主人公・佳恩は、ある出来事について、家族同然に親しくしていた先輩カップルと意見が対立した。何度か二人と意見を交わしたあと、最終的には自分の考えと相反する意見を持つ二人とは絶交した。佳恩は、“思考を外注する”ことなく自分の頭で考え抜いた結果、親しい人と縁を切った。もし、気にしない、深く考えないという選択をしていたら、縁を切るなんてことはなかっただろう。読んでいて胸が痛んだ。

 

社会で生きていくためには、自分と意見が違う人とも上手くやっていく術(意見を交わし妥協点を見つける、あるいは関係を壊さないように表面的には同意するなど)を身に付けることはたしかに大切だろう。しかし、受け入れ難いと思うものは受け入れないという選択肢もあっていいのだ。そして、その選択をした結果生じてしまった絶縁、孤立とどう向き合って生きていくのかが重要だ。迷っても、ふらついても、自分の船の舵だけはしっかり握って進むほかない。