とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

美術展巡り9月

◆9/9(土)ベルナール・ビュフェ美術館(静岡県

 

【“ビュフェ・スタイル”とは何か?】

ベルナール・ビュフェの絵に出会ったのは去年だった。山形美術館で開催されていた「服部コレクション 山形が誇るフランスと日本の美術」で、ある一枚の絵に強烈に惹かれた。それが、〈馬の頭ガイ骨〉という作品だった。その絵を見て、素敵だとか、美しいとか、そういう感想を抱いたわけではなかった。どちらかと言えば息苦しくなるような絵だった。それでも、この人の作品をもっと見てみたいという衝動に駆られ、調べた結果ベルナール・ビュフェ美術館に辿り着いた。

 

どんよりと薄暗いような画面と黒い輪郭線が特徴的な作品を見ていると、不安の感情がプクプクと膨らんでくる。抑圧されたような、重い雰囲気が漂う作品が多い中、〈死 16〉という作品が特に印象に残った。その絵は、骸骨というまさに死の象徴が描かれていた。しかし、その表情や佇まいはどこか生き生きしている気がした。それは、ビュフェが亡くなる年に描いたものだった。ぼんやりした概念として死を捉えているのではなく、はっきりと自らの死というものを感じていたからこそ描くことができたのかもしれない。絵のスタイルは変わらないが、それまで見てきた作品とは一線を画すような清々しささえ感じた。この絵から強く感じたのは、解放、だった。死への恐怖ではない、生からの解放だ。

初期から晩年の作品まで存分に味わうことができた。