とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

信じた道を進む強さ

◆観た舞台

舞台『ジャンヌ・ダルク

演出/白井晃

脚本/中島かずき劇団☆新感線

出演/清原果耶、小関裕太ほか

【東京公演】2023年11月28日~12月17日 東京建物 Brillia HALL

【大阪公演】2023年12月23日~12月26日 オリックス劇場

 

演劇のおもしろさ、素晴らしさを改めて感じた。この感動をうまく言葉で表現できないことがもどかしい。役者はもちろん、この舞台制作に関わっている全ての人たちの熱量に圧倒された。血が沸き立つような興奮を覚えた。

 

まず驚いたのは人数だ。舞台上に100人はいたのではないか。その人数で繰り広げられる戦闘シーンは圧巻だった。舞台の上下、左右、客席通路まで使ったダイナミックな演出で、“観ている”というよりも、“体感している”ような感覚だった。

 

ジャンヌが戦場で旗を振り、フランス軍兵士の士気を高めるという場面がある。「フランスを救え」という神の声に導かれ、その声を信じて自らの使命とした彼女の圧倒的なパワーと覚悟が全身から滲み出ていた。しかし、無事にシャルル7世の戴冠式を終えてからは、神の声が聞こえなくなってしまった。そんな中でも戦場で旗を振り続けていたジャンヌだったが、勇ましさの中に不安や迷いが見え隠れし、これまでのような破竹の勢いが感じられなくなった。極端に変化したわけではなく、ほんのわずかな違いだが、その違いを繊細に表現する清原果耶さんの表現力に感銘を受けた。

 

神の声が聞こえなくなる、つまり、自分が信じていたものが消えてしまったとき、何を思うのか。神は「戦え」と言った、だからその言葉に従い、戦った。当然、多くの犠牲が生じた。彼女は迷っていた。このまま戦い続けることは正しいのか―

神の声が聞こえなくなった今、それでもなお神を信じて、神を信じる自分自身を信じることを選んだ彼女の強さは、火刑台の上での最期の瞬間まで失われることはなかった。

 

ジャンヌ・ダルクは、乙女、魔女、異端、聖女…様々な呼ばれ方をして、特別な存在であるイメージが強かったが、この舞台においては、迷いながらも自らが信じた道を歩んだひとりの人間という印象の方が強かった。