ある日の夕暮れ。
つい先ほどまで雨が降っていたことを証明するような、湿り気のある香りが立ちこめていた。
雨は嫌いだ。雨の日は体が重くて気が滅入る。
その日もどんよりした気分で職場から駐車場まで歩いていた。
すると、視界の隅に“色”を捉えた。
濃くてはっきりとしたピンク色、ツツジの花だった。
雨に濡れていたから妙に色っぽく見えた。
晴れている時はこんな表情をしていなかった。
晴れている日は光合成が活発に行われるから、内側と外側が循環する。
だからカラッとスッキリした表情に感じられたのだと思う。
一方で雨の日は、内側に気が滞留しているようで、何となく窮屈な浮かない表情に見えた。
まあ、花の見え方なんて見る人の気持ち次第だと言ってしまえばそれまでだが。
その日のツツジは限界までピンク色の濃度が高まったようで、窮屈だけど艶やかな、不思議な輝きを放っていた。