とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

無知の恐怖

先日、祖母から相談されたことがある。それは、スマートフォンの料金プランについてだった。契約時の話を聞いて、契約書やプランの内容を読んで憤りを覚えた。なぜか。オブラートに包まずに言えば、“無知な消費者を食い物にしている”と感じたからだ。販売した側にそのような意図はないとしても、客観的に見た人がそう捉えてもおかしくはないくらいの出来事だった。事案は以下の通り。

 

《事案詳細》

X:祖母(70代後半)

Y:キャリアショップ(注:Yはイニシャルではない)

Z:私(20代、本文執筆者)

 

令和5年1月、Xはスマートフォン買換えのため一人でYを訪れた。契約締結に際し、XはY従業員に対し「スマートフォンは連絡手段としてのみ利用するため、電話とメールとLINEが使えればいい」という意思を表示した。しかし、Y従業員から提示された料金プランはインターネット(Wi-Fi)利用プランとセットになっているものであった。Xは再度、「インターネットは使わない」と伝えたところ、Y従業員は「セットの方がお得だ」との説明をした。Xはその後「お得」である理由を聞くなど試みたが、理解に至るような説明はなされず、手続きが進められた。Xは十分に内容を理解できず、インターネットとセットでなければスマートフォンが使えないのではないかと誤認したまま契約書にサインをした。2月下旬、Xの元に契約締結後はじめて利用料の請求書が届いた。Xは記載の請求金額を見て、買換え前の金額より著しく高額であることに疑問を持ち、Zに相談。Zが契約書の内容を確認したところ、スマートフォンの基本使用料に加え、インターネット利用代金も請求されていることが判明。さらに、Wi-Fiルーター代金は分割支払(36回)の契約になっており、Xはその旨を知らなかった。Wi-Fiルーターの状況としては、プラグをコンセントにさしてはいたが、設定がされておらずインターネットには未接続だった。その後接続はしたが、Xはスマートフォン自体ほとんど使用せず、待機電力だけがかかってしまう状況のためプラグを抜いた。令和5年3月、XとZはYを訪れた。契約内容の確認を求め、基本料金プランとセットになっているインターネット(Wi-Fi)利用プランを解約し、分割払い契約になっていたWi-Fiルーターの残金を一括で支払った。ルーターは必要ないためYに廃棄を依頼した。

 

契約に際し、祖母は自らの利用実態と意向(使用頻度は低いこと、最低限の機能があればいいこと)を伝えていた。それにも関わらず、キャリアショップ従業員はその利用実態にそぐわないプランを提案し、彼女の理解が追いつかないまま手続きを進めていることが悪質であると感じた。また、祖母の年齢やインターネットに関する知識を考慮し、そのサービスの必要性も含めて適切に判断できるような説明を行ったとも言えない。ただ、祖母に落ち度が全くないとは言い切れない(理解できないが契約書にサインしてしまった…など)。しかし、それを考慮しても、全く利用しないインターネット料金や廃棄するルーター代金を支払う(もちろん祖母自身が払った)ことについて、私は納得ができない。

 

今回のように、知識や情報に乏しい人が十分に理解しないまま何の得にもならないサービスを契約し、無駄な料金を支払うことになるケースは少なからずあるのではないかと思った。知らないということは怖いことだ、と祖母は話していた。その通りだと思った。今回の場合、祖母が言う「知らない」のニュアンスとしては、料金プランのしくみが理解できない・分からないということなのだと思う。分からない、ということは何が正しいのか(自分にとって最適なのか)判断ができないということ。逆に、どれを選ぶと損になるかの判別がつかないことでもある。

 

スマートフォンやその料金プランについては、販売する側と消費者(特に高齢者)の知識量・情報量に圧倒的な差がある。販売する側も、相手が100%理解するような説明をするとなると店が回らなくなるから、効率よく手続きできるように説明方法もマニュアル化されているのだろう。契約のノルマもしくは契約数に応じてボーナスが出るなどのインセンティブがあるのかもしれない(あくまで想像です)。そうすると、圧倒的に知識量・情報量が少ない消費者がマニュアル化された説明を理解するため、また、「お得」という言葉に惑わされず自分にとって適切なプランを選択するためには、やはり知識をつける努力をするほかないのか。販売店側がもっと配慮する部分はないのだろうか。消費者のニーズに応じた契約内容で契約を締結できるように、説明方法の見直し・改善指導を求め、今回の事案を然るべき機関に情報提供するつもりだ。