とりあえずそこ置いといて

映画化も、ドラマ化もしない何でもない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

ある街の冬三景【三、束の間の眩しさ】

冬の空はほとんど灰色だ。雪が降っていれば限りなく白に近い灰色。分厚く黒っぽい雲しかない日は、まるで嘔吐寸前のゲッソリした顔に見下ろされているような気がして気が滅入る。その分厚い雲から何かがポロリと落ちてきたかと思うと、次から次へと白い粒が吐き出され、アスファルトはあっという間に粒で埋め尽くされた。素直にアスファルトに落ちればいいが中にはショートブーツの中に入り込んでくるやつもいて、体温で溶けたその粒が靴下にまだら模様を作るのだ。

 

しばらくすると、空が明るくなり始めた。風が強い日は雲の動きも速く、陽光が差し込む瞬間がある。私はその光に目を細めた。目を細めるほどの強い光を浴びたのは久しぶりだった。ブワッと感情が高まった。そして気がついた。日焼けが気になるからと夏にあれだけ避けていた陽光を、私は渇望していたのだ。心の奥深くまで差し込んでくるような強い光を欲していたのだ。雪が自然のレフ板となるから、眩しさは夏の倍くらいあるだろうか。ちょっと言い過ぎか。だが、冬の陽光は美しいだけではないのも事実。陽光に照らされほんの少し溶けた路面の氷は非常に滑りやすい。気をつけて歩いていても転ぶことがあるし、車もいつも以上に注意して運転しなければ事故につながる。そして屋根に積もった雪が溶け始めると、落雪による事故も起こりやすくなる。溶けてしまえばただの水なのに、毎年、何人もの命が奪われている。

 

再び、灰色の分厚い雲が太陽を飲み込んだ。次に顔を出すのはいつだろうか。束の間の眩しさを待ち望む。