クマバチの飛ぶ音を最大音量まで上げたような大きな音が、日曜日の夕方に響き渡っていた。川沿いの土手で草刈りをしていたのだ。この時期、雨と日差しをたっぷり浴びた草は、ありえないくらいの速さで成長する。そのあまりの逞しさに恐怖すら感じることがある。定期的に刈らないと、どこまでも伸びて歩道を圧迫し始める厄介者だが、草刈り機の刃に倒れた草が放つ瑞々しい香りには、惹かれるものがある。
青臭いというか、懐かしい匂いというか…それは小学生の頃の記憶を呼び起こすものだった。
〈夏のはじめ。授業中に聞こえてくる草刈りの音。はじめはうるさいと思っていたが、だんだん耳慣れしてくると心地よく聞こえるのが不思議。全開の窓から風に乗って香ってくる青臭い香り。あ、夏だな。休み時間前、早く外で遊びたくてソワソワしているクラスメイト。そういえば明日からプールが始まるな―〉
それなりに深いところに収納されていた記憶の断片がパッと現れてはスッと消えていく。当時はそれほど意識して嗅いでいたわけではないのに、これほど記憶に結びついていたとは思いもしなかった。雑草は煩わしいものとしか思っていなかったが、こんな風に懐かしい気持ちにさせてくれるなら、少しは好きに…いや、やはり好きなのは香りだけだ。
刈られてしばらくして、乾燥してきた時の匂いもまたいい。香ばしくて少し渋めな夏の香りだ。