日々の断片採集記

映画化もドラマ化もしない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

【読書記録⑧】人と文化と戦争と

◆読んだ本

『ひとはなぜ戦争をするのか』/アルバート・アインシュタイン、ジグムント・フロイト、浅見昇吾訳/講談社/2016年

 

ほしい本があって本屋に行ったのに、結局ほしかった本を買わずに別の本を買ってくることがよくある。この本もそうだった。そして、そういう本に限って買ってよかった・読んでよかったと心から思うものだ。

 

フロイトアインシュタインが手紙のやりとりを行なっていたということ事実に驚くと共に、そのテーマが「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」というものである点に非常に興味があった。手紙のやりとりがなされたのは1932年。第二次世界大戦が始まる7年ほど前であり、日本が国際社会から孤立していった頃である。国内政治の場においても軍部が台頭し、戦争の匂いが強くなっていた時代である。

 

アインシュタインの手紙には、人々が平和の実現のために努力をしてきてもなお戦争がなくならない理由は、「人の心のなかに、平和への努力に抗う種々の力が働いている」からだと書いてあった。その力の一つが、人間に本能的に備わる「相手を絶滅させようとする欲求」であるという考えに驚いた。そんな恐ろしい欲求が本当にあるのだろうか。

この点についてフロイトは、人間の欲動は「保持し統一しようとする欲動」、「破壊し殺害しようとする欲動」の二種類あると言い、アインシュタインの考えを肯定している。フロイト曰く、二つの欲動が互いを促進し合ったり、対立し合ったりするからこそ生命の様々な現象が生まれるのだそう。人間の本能として備わっている以上、それを取り除くことはできない。ましてや二つの欲動は複雑に重なり、絡み合って一つの行動を引き起こしているものだから、破壊行動の要因だけを綺麗に取り除くことなどできるわけがない。だからこそ、その攻撃性を戦争という形で発揮させないようにすればよいとフロイトは続ける。そして、その方法一つとして、「文化の発展を促すこと」を挙げていた。文化の発展により人々の知性が強化され、結果的に欲動をコントロールしはじめるという。

 

私は、フロイトは自身の考えにかなり希望を持っているような印象を受けた。文化の発展の特徴(フロイトが挙げていたことの一つが、文化の発展のために人間の性的な機能が様々な形で損なわれることにより人類が消滅する危険性がある、ということ)を踏まえた上で、それが人間の心にもらたすものが、戦争をなくす方向に動いていく力になると期待していた。

 

今も世界では戦争が続いている。すべての人間が平和を望むようになるまでどのくらいかかるのかは、フロイトアインシュタインでさえ明確な答えを出せていない。私はこの本を読んでふと思った。もしかしたら戦争がなくなる時は人類が絶滅する時かもしれない―極端な考えかもしれないが、全くあり得ないことはないと思う。

ところで、文化が発展していく過程で、人間の心に「破壊の欲動」とは別に戦争に突き進む要因となる新たな欲動が生まれることはないのだろうか。