日々の断片採集記

映画化もドラマ化もしない日常で感じたことや考えたことの寄せ集め

【映画記録④】いつもの朝は選び取るもの

◆観た映画

『世界征服やめた』

監督/北村匠海

出演/萩原利久、藤堂日向、井浦新

2025年/日本/51分

 

こんな映画はじめて観た。まるで“詩を観ている”ようだった。

なんというか、日常風景のはずなのに抽象的で、不思議な映像の世界だった。

朝起きて、支度して、仕事に行って、決められたことを決められた時間内にこなし、終業のチャイムが鳴ったら家に帰り、支度して、寝る。毎日同じことの繰り返しの中で、無感情のまま生きるサラリーマンの彼方と、いつも明るく彼に話しかける同僚の星野。対照的な二人だった。でも、どちらも心の中にぽっかりと穴が開いているような感じがした。そしてその穴に彼ら自身が侵略されそうになっている。

星野と居酒屋で飲んでいるとき、彼方はこう言った。

「誰も自分のことなんて見ていない。見えていない。」

孤独なのだ。人に囲まれて生きているはずなのに。自宅で首を括ろうとして失敗して、次の日首に跡が残っていても誰からも何も言われなかった。無感情な彼方が少し感情的になって話しているのが印象的だった。

他方、星野が一人屋上で感情を爆発させるシーンも印象に残っている。彼が生きる社会への絶望と、それでもなお明日を生きるか否かを選択できてしまうという希望(と言えるのかはわからないが)が複雑に絡み合った感情を見事に表現していた。

1時間に満たない短編だったが、長い一編の詩を読んだ後のように、見終わった後も腑に落ちることがなくしばらく考え込んでしまう映画だった。別の言い方をすれば、何度も見たくなる映画だった。